伊藤万理華・ドラマ『パーセント』は障がい者を起用した、お涙ちょうだい物語ではない。日本の作品が踏み込まなかった、新しい道の開拓だ【小林久乃】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

伊藤万理華・ドラマ『パーセント』は障がい者を起用した、お涙ちょうだい物語ではない。日本の作品が踏み込まなかった、新しい道の開拓だ【小林久乃】

伊藤万理華

 

◾️落ち度=責任の行方は私たちにあった

 

 『パーセント』が示した姿勢から、思い出した記述がある。兵庫県立神戸甲北高等学校による、障がい者のスポーツ事情について書かれたブログを偶然目にして、保存していた。そこにはイギリスの施設ガイドラインの説明があった。

 「障害とは、障害を持つ人にあるのではなく、その人の行動を制限する環境の貧しさが作り出すもの。車いす利用者がスポーツ施設を使えないのは、車いすに乗っているからではなく、設計や運営、人的支援でそれを実現できないスポーツ施設側の落ち度になる」

 おそらくブログを書いたのは高校の教師。このガイドラインを称賛し、高齢の母親と過ごす生活に不安を覚えるとも書かれていた。2021年に書かれた記述、読後に溜飲が下がる思いがした。落ち度=責任の行方は私たちにあったのか。

 この一文の表現に値するのが『パーセント』だ。新しい道を進んだドラマが、どんな着地を迎えるのか楽しみでならない。どうか、他愛もない結末になりませんように。

 

※ドラマ『パーセント』はNHKオンデマンドにて配信中。最終話は65日(水)0:35〜より再放送予定

 

文:小林久乃(コラムニスト、編集者)

 

KEYWORDS:

オススメ記事

小林久乃

こばやし ひさの

コラムニスト、編集者

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(K Kベストセラーズ)にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊行)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーションなどを業とする、正々堂々の独身。最新情報はhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

結婚してもしなくてもうるわしきかな人生
結婚してもしなくてもうるわしきかな人生
  • 小林 久乃
  • 2019.11.30
45cmの距離感 つながる機能が増えた世の中の人間関係について
45cmの距離感 つながる機能が増えた世の中の人間関係について
  • 小林 久乃
  • 2022.03.25
ベスト・オブ・平成ドラマ!
ベスト・オブ・平成ドラマ!
  • 小林久乃
  • 2022.12.16